侵入盗が増加傾向に
新時代の住宅性能、今“防犯”の視点が不可欠に ここ数年、ピッキングによる住宅への侵入盗が社会的な問題としてクローズアップされている。 これまでわが国の治安の良さは世界に誇れるものであったが、隣三軒両隣といったコミュニティーの結びつきが薄れ、社会的な構造も変わっている中で、安心・安全神話が崩れつつあるのである。 これまで防犯についての社会的な意識が低かったこともあり、住宅の防犯に対する対策は決して十分とはいえなかったのが現実だ。しかし、侵入盗の増加などがマスコミなどでセンセーショナルに取り上げられはじめたこともあり、居住者の意識も徐々に変わってきている。 (社)プレハブ建築協会が2000年9月に行った調査によると「消費者が家づくりで気にする点」として「防犯」が7位にランキングされた。最も高い「耐震」が18.2%であることを考えると高い数字であると同時に防火性の8.9%と同じぐらいに関心を持っているということになる。 一方、産業界でも住宅における防犯をめぐり新たな動きが始まっている。特にロックメーカーは相次いで新商品を開発、「ピッキングに強い」ことをキーワードに錠前の取り替えを促している。 |
泥棒はこういう家を狙う
泥棒に狙われ、実際に侵入されたケースをみると、玄関や勝手口に鍵をかけていなかった、また、窓のクレセントを鍵と混同して補助錠をつけていなかったなど、居住者の防犯に対する無防備な姿勢が浮きぼりになっている。しかし、こうした居住者の油断だけでなく、プロの泥棒は“住宅のスキ”も狙う。 侵入された住宅は、扉や窓、建物のレイアウトが侵入しやすいものであったりするケースが多い。 具体的に例をあげると、侵入する際に外部から見えにくいデザイン、レイアウトは格好の標的。腰壁や植栽、ベランダの腰壁は犯行の目隠しになりやすい。同時にこれらは忍び込む際の格好の足掛かりともなり得る。防犯面では、こうしたちょっとした考慮が大きな効果を発揮する。つまり、泥棒のターゲットになりにくい配慮が有効なわけだ。 もし、不幸にもターゲットとされ、侵入を試みられた時には、執拗に頑張って侵入を許さないこと。つまり、しっかりとしたロックや開口部などを備えておくことである。犯罪者の最大の関心事は、いかに早く仕事を済ませるかで、周囲の人々に見られることを嫌う。調査によると、10分もかかって侵入できなければ、大部分の泥棒は諦めるそうだ。 玄関などの出入り口には破壊に強く頑丈なものが必要で、また、ガラス窓についてはクレセントだけでは不十分であり−そもそもクレセントは気密性を高めるものであり、錠ではないということを勘違いしている居住者が多いという−補助錠を取り付けたり、通常の板ガラスよりも強いガラスをいれることが有効だ。 しかし、最近ではドアを破壊など、乱暴な手段での侵入も増えてきており、こうした場合には防犯センサー、通報機といった防犯機器が役立つことになる。
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“安全”が不可欠の要素に
侵入盗は、被害者に経済的な損失を与えるばかりか、その侵入によってもたらされる被害者の心理的な不安は計り知れない。また、この種の犯罪は時として、殺人、強盗、放火や強姦といった凶悪犯罪に移行する恐れが強いことも大きな問題だ。事実、空き巣に入った犯罪者が家族に発見されたとたんに強盗に変わることも珍しくない。 これまで住宅の性能というと耐震・耐久、省エネ、バリアフリー、健康などがクローズアップされ、これらをキーワードに新しいマーケットが広がり、商品開発が行われてきた。これらに加えて、新しい視点として「防犯」が注目されつつある今、差別化の観点からも、その配慮が重要になってこよう。 もちろん住宅への侵入犯罪をふせぐための社会的役割としても、住宅のプロである住宅供給者(ビルダー)の積極的な取り組みが求められることは言うまでもない。 |
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